『相棒22』の初回に青木年男が登場することを知った時、私は授業を受けていた。
教授に隠れてスマホをいじっていたわけではない。
グーグルクラスルームで資料を見ている時に『相棒』の公式LINEから通知が来たのだ。
その後、ゼミのレポート発表の順番を決めることになった。
『相棒22』の初回放送前日の発表者がなかなか決まらなかったので、思い切って立候補した。こういうのは早いうちに終わらせた方が良い。
『相棒』に背中を押された。
やる気がない時、テンションが低い時。
『相棒』の通知はいつも絶妙なタイミングでやってきて、僕を助けてくれる。
レポート発表の資料作りにかまけていたが、気付けばブログが百回を超えていた。
ブログとYouTubeを始めてから一年以上が経っていることになる。
それだけやっていれば、素人といえどもいろいろと発見がある。
まずはYouTube。
・動画は一日に十本までしかアップロードできない。
・再生数が増えること、登録者が増えること、高評価がつくことが想像以上に嬉しい。
・登録者が減ること、低評価がつくことが想像以上に悲しい。
・「相棒カード」をやるとマッチポンプ式に再生数が増える。
・アイコンとアカウント名のためか、外国人だと思われている。
・登録者も海外の方がほとんど。
・なぜか、鳩の動画が人気。
次はブログ。
・最強の地産地消。
・訪問者は自分と母がほとんど。
・だからこそ、スターがつくと嬉しい。
「親に言えないことはしない」とはよく言ったもので、ブログに「母」という検閲者がいることによって、何かが保たれている。
例えば、最近乃木坂のライブに行ったことも、照れるのであまり詳しくは書けない。
これはデメリットかもしれないが、なんらかの縛りがあった方が上手くいく気がする。
読書メモも縛りのひとつだ。
たぶん、小六の時に本の紹介をする「図書会社」という係に所属していたことが由来だ。
それでも、過去の私と現在の私はぜんぜん違う。こう見えても変化している。
汗水垂らしてまでブックオフに行かなくなった。
クーポンに追い立てられない生き方がこんなにもラクだとはね。
今週の読了本
大江健三郎さんの『個人的な体験』-書下ろし長編。
わが子が頭部に異常をそなえて生れてきたと知らされて、アフリカへの冒険旅行を夢みていた鳥は、深甚な恐怖感に囚われた。嬰児の死を願って火見子と性の逸楽に耽ける背徳と絶望の日々・・・・・・。狂気の淵に瀕した現代人に、再生の希望はあるのか?暗澹たる地獄廻りの果てに自らの運命を引き受けるに至った青年の魂の遍歴を描破して、大江文学の新展開を告知した記念碑的な書下ろし長編。
-裏表紙より引用。
短編「不満足」(『空の怪物アグイー』所収)に登場した鳥(バード)が主人公。菊比古も登場する。題材は短編「空の怪物アグイー」ともリンクするものだった。
著者の経験がきっかけとなった作品だと聞いていたので、私小説のようなものだと思っていたが少し違った。それでも、子どもの誕生によって未来・生き方が変化することに対する不安・覚悟というテーマには、親となった著者の想いが大きく影響しているように思えた。普遍的であり、誰にでも訪れる可能性がある感情。
(前略)「しかし、この現実生活を生きるということは、結局、正統的に生きるべく強制されることのようです。欺瞞の罠におちこむつもりでいても、いつのまにか、それを拒むほかなくなってしまう、そういう風ですね」
「そのようにではなく現実生活を生きることもできるよ、鳥。欺瞞から、欺瞞へとカエル跳びして死ぬまでやっていく人間もいる」と教授はいった。
-250、251頁より引用。
規範からはみ出さないように生きることは、想像よりも難しい。結局は規範に則ることになったとしても、その決断とそこまでの道のりは自分の意志によるものだということに変わりはない。そんなメッセージに思えた。
非常に爽快な結末だった。
積ん読が解消されたら、あとがきに記されていた一連の作品も読んでみたいと思った。
訣紊記
5 無口な男
平成二十一年、ひとりの男が眠っていると黒衣の男が現れた。夜だったので見えにくかったが、直感的に人間ではないと思った。黒衣の男は何も言わずにただ佇んでいたが、しびれを切らした男が「大丈夫ですか」と尋ねると、その姿は消えてしまった。
今週の些事
・例の時計の電池を換えた。遅れた時刻を合わせる行為を愛撫のように思っていたが、針が止まったら止まったで可哀想に思えてきた。私は勝手な人間だ。時計は正常に動いている方が良いに決まっている。
<了>