■Ⅵ~訣紊記

1 空白の時間

平成二十六年、とある小学校の話である。教室で試験の採点をしていた教師は、夕方のチャイムが鳴った時に、壁掛け時計が一時間遅れていることに気付いた。少々不審がりながらも採点を中断して壁掛け時計の時刻を合わせると、直後に別の教師がやってきて窓の戸締りの確認を始めた。教室巡回の時間にはまだ早すぎると思って壁掛け時計を見ると、針は彼が合わせた時刻の一時間後を示していた。いつの間に時間が経ったのだろうかと不思議に思って机に戻ると、途中だったはずの採点は終わっていた。

 

2 ヘッドスプリングの教師

平成二十九年、ヘッドスプリングで登下校する教師が、とある中学校に赴任した。

 

3 黒板の少女

平成三十一年、とある高校の話である。放課後、男子生徒がひとりで板書を消していると、教室にひとりの女子生徒が現れた。彼は彼女に見覚えがなかったが、入学したてであることと、生徒数が多いことから、特段不審には思わなかった。その日以降、放課後になると彼女は現れ、二人は会話を楽しんだ。板書を消し始めると現れ、終わるころには出ていくのが常だった。また、教室にほかの人物がいるときは、なぜか彼女は現れなかった。そのことがかえって、彼の思いを募らせた。

ある日を境に男子生徒は姿を消した。彼が登校しなくなった朝、最初に教室にやってきた生徒は、黒板の中に抱擁する男女の姿を認めた。その姿が絵にしてはあまりにも生々しかったため、その生徒はほかの教室にいる友人に声を掛けた。ところが、教室に戻ってみると黒板の男女は忽然と姿を消していた。

 

4 蟷螂

 

 

<了>