ナメてんじゃねえぞコラ2013

『相棒』関連雑誌、今回は2013年に公開されたスピンオフ映画『相棒シリーズ X DAY』にまつわるもの。

 

『日本映画navi vol.38』(2013年、産経新聞出版)-PLATINADATA

ブックオフオンライン。220円。

★特写&インタビュー 川原和久 P42~45

・「車の上を走るのも、『アクションシーンは頑張ってもらいます』と、監督から初めて聞かされた時は冗談だと思ったんですよ。台本ではそこまで派手なシーンじゃなかったから。でも、画コンテができてきて」116ページの「映画紹介」によれば、アクション用の画コンテ作られるのは『相棒』では珍しいことらしい。

・「捜査一課や組対五課の日常を出せたのはよかったんじゃないかな。いつもは右京が全部解決しちゃいますけど、じゃあ右京が事件に関われなかったらどうなるんだろうってことです」

 

『X DAY』と同じく橋本一監督がメガホンを取った『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』の製作現場密着リポートも載っていた。『相棒』の主要スタッフが参加している作品である。

 

今回購入したものではないが、<『相棒』捜査一課 伊丹憲一>という最高のムック本も存在するので念のためお知らせする。

(2013年、ぴあ)

模試の帰りに寄り道してこの本を買った、中三の冬の日のことは一生忘れないだろう。

 

月刊『シナリオ 2013年4月号』-アマゾンで購入。

(2013年、シナリオ作家協会)

劇場版にあたって 櫻井武晴 P78・79

・「事件物を書く時には、『架空の憂鬱』を作るよりも、『憂鬱な日常』を丁寧に扱うべきだと考えている。その上で『架空』にできるのが事件物のフィクション作家だ」

・「今回の劇場版にあたっては『スケール感』が欲しいと言われた。でもお金はそんなにかけられないとも言われた。両立する手としては『憂鬱な日常』にスケール感のあるものを選ぶしかない。そこでこの題材を選んだ」

・「見栄を張らずに「難しいことは分からない」と言える伊丹のような人物が、この題材の主人公に向いていると思った。その対極にある主人公として岩月を作り、題材の支援役として右京、神戸、雛子たちクレバーな人々に頑張っていただいた」

・「テレビドラマ『相棒』を見てくれている人のために、ドラマでは見せなかったレギュラー陣の組合せや動きも投入してみた」

 

『相棒シリーズ X DAY』 脚本:櫻井武晴 P80~114

東京明和銀行のシステム部社員・中山雄吾の転落死体が発見された。遺体の傍らには100万円の束が燃やされた痕跡が、ビルの屋上には争ったような足跡があったことから捜査一課は殺人と断定。被害者宅での鑑識・押収作業に向かおうとした矢先、現場にサイバー犯罪対策課の捜査官・岩月彬が現れる。死亡した中山は複数の端末を経由してネット上に謎の「半角英数データ」をアップしており、不正アクセス容疑でマークされていたのだ。伊丹は岩月を中山宅の捜索に誘うが、岩月は管轄外の事件には興味がないらしく……。反目するふたりを待ち受ける真実とは。

・川原さんがおっしゃっていた通り、脚本には「車の上を走る」といったアクションの指定はなかったが、冒頭の「ーー岩月彬。その顔に変化する様々な半角英数が飛び込みーー」や、ラストの「と、カードを入れる穴からATMを覗いた。ATMの中ーー薄暗い中に唸るような札束があり、ブラックアウトーーエンドロール、せり上がる」など、私が勝手に橋本監督の演出によるものだと考えていた箇所が、脚本に存在することが判明した。

・金融封鎖に関するト書きが詳細。

・伊丹と岩月の小競り合いの部分はアドリブが多い。例えば、脚本の

岩月「聞きわけ良くなりましたね(行く)」

「この野郎」「褒めたんです」と言いつつ去る二人。

という部分は、

岩月「聞きわけ良くなりましたね(行く)」

伊丹「犬かよ俺は。ナメてんじゃねえぞコラ(追う)」

になっている。このような差異を探すのが醍醐味である。

 

購入した月刊『ドラマ』や『シナリオ』を読んできたが、その中には片山雛子衆議院議員が登場する話が含まれていた。『X DAY』で駆け引きの材料となる「改正通信傍受法案」は『相棒 -劇場版-』の冒頭でも言及されたものだ。ほかの脚本家が作った設定を引き継ぎ昇華するのは『相棒』お家芸のひとつだが、櫻井武晴は特に長けていたことを改めて実感した。

 

 

気づいたら『相棒』の脚本が載っている雑誌がほとんど揃っていた。嬉しい。

残すは「潜入捜査」(シーズン3 脚本:輿水泰弘)が掲載されている月刊『ドラマ 2005年2月号』のみ。

行くか、神保町。

 

 

<了>