充実の充血

『相棒』のことになると思考が止まらなくなってしまう。

とりとめのない思考を短時間でまとめるのは困難だ。

だからこそ、最新回のストーリーレビューはしない方針を採っている。

でもやっぱり、ほかの人が書いた感想を読むと血が騒ぐ。

共感したり、感心したり、触発されて新たな気付きを得たりするのだ。

とりわけ今シーズンは血が騒ぐ。

どうせ書くなら鮮度が高い方が良い。

だから、行き場のなかったこれまでの気付きを記す。

 

太田愛脚本の右京さんは「僕は思うのですが」と言いがち。

・「薔薇と髭と菫たち」(脚本:岩下悠子、S21#15)でヒロコママが亀山君をドッキリにかけたのは「ペルソナ・ノン・グラータ~殺人招待状」(脚本:輿水泰弘、S21#1)のオマージュ?

・「無敵の人~特命係VS公安・・・巨悪への反撃」(脚本:神森万里江、S22#2)での青木の監禁のされ方が「青木年男の受難」(脚本:児玉頼子、S18#12)と似ている。

・「スズメバチ」(脚本:岩下悠子、S22#3)は“元彼を盗聴し、その内容をきっかけに殺害を決意する女性”が登場する点で「クイズ王」(脚本:深沢正樹、S2#12)と共通しているが、前者は利他的、後者は利己的と、犯行動機においては対照的である。

・「天使の前髪」(脚本:森下直、S22#4)で“手に届く範囲に凶器があることの都合のよさ”に言及されたこと、最終的に“芝居の稽古を口実にした犯行であったこと”が明らかになったことは、ある意味でメタ的である。

・「冷血」(脚本:岩下悠子、S22#5)について。右京さんが酢豚のパイナップルが苦手であることが判明したのは「緑の殺意」(脚本:戸田山雅司、S4#12)。「声なき者~突入」(脚本:太田愛、S15#14)では冠城君がそのことをイジっていた。「ピルイーター」(脚本:輿水泰弘、S2#18)で大河内監察官は、ラムネの件を口外したら懲戒処分だと特命係に釘を刺していた(亀山君は美和子さんに、右京さんはたまきさんにすぐ話していた)。今回は桐生刑事の勘違いのおかげで首の皮一枚つながったか。それとも、監察官は飲み物のラムネも好きなのか。

 

今後も気付きを記すかもしれない。

 

 

科捜研の女 -劇場版-』が日本映画専門チャンネルで放送されたので、録画して観た。

www.nihon-eiga.com

公開は2021年。脚本は櫻井武晴さん。監督は兼﨑涼介さん。

京都で、そして世界で相次ぐ科学者の不審な転落死をめぐって、京都府警と“ダイエット菌”の実用化を目指す微生物学者・加賀野が対決するというストーリー。

 

先にノベライズ版を読んでしまっていたのだが、映像ならではの表現、古都に映える紅葉の美しさを堪能できた(あまりにも鮮やかだったのでもしかしたらCGなのかもしれない)。ノベライズ版が映像にかなり忠実だということもわかった。

 

映画ということもあり、かつてのレギュラーキャラクターたちが大集合するという、つまみ食いしかしていない私ですら胸が熱くなる展開があった(登場の仕方や理由に不合理さを感じさせないのだからスゴイ)。そして、当然のように元科捜研メンバーや元夫に仕事を割り振るマリコさんが面白い。“科学者同士の対決”という、シーズン22にも共通するシリアスな雰囲気のなかで、その面白さが際立っていた。

“耐性菌”という、コロナ禍では先見的な、インフルエンザが流行する現在ではタイムリーな要素も扱われていた。

“落下する人間と目が合う”という要素は、『相棒』の「神の憂鬱」(脚本:櫻井武晴、S8#19)と共通していた。

 

科捜研の女』の放送が開始されたのは1999年であり、『相棒』や『CSI:科学捜査班』よりも早い。放送話数は『相棒』の方が上回っているものの、日本における現行連ドラの最長記録を保持している。

コメディ・シリアス、対立・調和と、度々作風が変化したり、レギュラーキャラクターが交代したりすることが特徴で、プレシーズンの時点で『相棒』を確立していた『相棒』とは好対照の面白さがある。

 

①鑑定で容疑者が浮上

②容疑者が何者かをかばって自白

③容疑者が隠した凶器等を科捜研が鑑定

④容疑者でも、容疑者がかばった何者かでもない意外な真犯人が明らかになる

という、ある程度のフォーマット(すべての話がそうだとは言っていない)があることも『相棒』との違いだ。

 

フォーマットがあることの面白さ、新作を作り続けるスゴさはもちろんだが、『科捜研の女』のなかには、私が『相棒』を観ていて感じる面白さもある。最近の作品では、シーズン21の正月スペシャル(脚本:櫻井武晴)はハンカチの謎の真相が気持ちよくて立て続けに二回も観たし、濱田龍臣さんがゲストの「人体白骨化20日法」(脚本:真部千晶、S22#4)はヒントのさりげなさに感嘆の息が漏れた。

 

フォーマットがなく、『科捜研の女』と同じく競作形式である『相棒』は、それゆえに好みや各々が思う“『相棒』らしさ”、“『相棒』っぽさ”が細分化している。あえて『相棒』以外のドラマを観ることで、自分の好みの正体がわかるかもしれない。

 

夏以降、私のなかで『科捜研の女』ブームが続いている。CSテレ朝チャンネル1ではシーズン7の放送が、東映チャンネルではシーズン2の放送(第1話、第2話は無料らしい)が始まるので、録画して観よう。

 

前に「今月は忙しい」的なことを書いた気がするが、単にテレビを観ているだけである。

 

YouTubeで期間限定公開されている『犬神家の一族』(1976年)も観た。前に観た吉岡秀隆版とは展開に違いがあって面白かった。せっかくだから比較をしたかったが、『刑事コロンボ』の録画をするために泣く泣く消去していたのだった。痛恨の極み。皆川猿時さんが演じる古館弁護士の雰囲気は、1976年版とかなり近かったのだと感じた。今も昔も役者さんってスゴイ。私に言えるのはそれぐらいである。

 

 

<了>