同窓会の出欠確認が締め切られた。私は不参加。親しかった友人らも同様だった。
なぜか安堵している自分がいる。
しかし、彼らの間で別の催しが計画されていると考えると、夜もおちおち眠れない。
真心ブラザーズの『家巣、愛無 OK!』(作詞・作曲:YO-KING、2007年)という曲に「テレビの予約録画がうまくできてるかどうか心配なのさ」という歌詞がある。
『古畑任三郎』の全話録画という、崇高なる使命を遂行している私にとって、これほどまでに共感できる歌詞はないだろう。
予約録画の失敗は、死ぬことの次に怖い。特に停電。雷はダメ。
雷は充電中のパソコンの天敵でもある。
「地震雷火事親父」は本当だなと思う。
親父は言うまでもなく、地震と火事も怖い。
もし今、地震が起きたら、火事が起きたら、一回しか観ていないDVDやBlu-ray、未読の本たちは無に帰してしまう。
これらよりも優先順位が高いものはたくさんある。
だからこそ、損をしたくないという気持ちが働く。
物欲が減退したのはこのためかもしれない。
空き時間には『相棒』のDVDやBlu-rayを観るべきだ。
無駄にしないために、目に焼き付けるべきだ。
にもかかわらず、何度も観た録画番組を流してしまう。
ディスクを入れる手間を惜しんでのことなのか。よくわからない。
授業が始まった。一日だけだったが、翌日は上半身がバキバキだった。
かつては筋肉がついていた反動か、今は筋肉がつく以前よりも骨ばっている気がする。
電車通学のため、本が読める。後悔する前に積ん読を減らしていかなければ。
ようやく、星新一の『祖父・小金井良精の記』を読み終えた。
夏休み前から読んでいたものだ。
この本を入手したのは昨年。
それまでは七年くらいずっとブックオフで血眼になって探していた。
神保町で単行本を見かけたことはあったが、文庫派だったので諦めた。
ブックオフオンラインデビューしてからはあっという間に揃った。下巻・上巻の順に。
びっくり。どの店にも無かったのに。
と思ったら、この間行ったブックオフにあった(下巻だけだが)。
手に入れた途端に出現率が上がる。ゲームみたいだが、こういうことが本当によくある。
まあ、その頃には読み始めていたのでセーフだ。
もちろん、上巻から読んだ。
上巻あらすじ
小金井良精は安政五年(一八五八)、越後長岡藩士として生まれた。戊辰戦争を指揮して新政府軍に敗れた河井継之助や、「米百俵」で名を馳せる小林虎三郎とは姻戚関係にあった。会津への敗走行を経験して維新を迎え、東大医学部の前身に入学、ドイツ留学など、苦学力行して解剖学の草創期を築いた。森鴎外の妹との結婚、アイヌの人骨研究など、前半生を描く。
-裏表紙より引用。
下巻あらすじ
小金井良精の解剖学の関心は、人類学、考古学の方へも及び、退官後も先住民族、古事記の研究などに尽力し、晩年まで大学に通った、さまざまな出会いも広がり、娘婿星一、考古学者大山柏、政府の黒幕杉山茂丸、そして名もない市井の人々との交情を大切に、戦争へと向かう明治・大正・昭和の歴史を、時代に翻弄されずに誠実に生きた。著者畢生の大河小説。
-裏表紙より引用。
著者の最長作品かつ上下巻の評伝なので多少身構えていたが、小金井良精の日記と関連する文献の引用、関係者の証言、それらを補足する星新一の文章で構成されていたので、かなり読みやすかった。
テーマごとに章立てされていたので、小金井良精についてより詳しく知ることができた。
私は「星新一の祖父」であること、アイヌ(この本では「アイノ」)遺骨の盗掘問題についてでしか小金井良精を知らなかった。この本には、問題となった北海道旅行についての記述もあった。盗掘はもちろん許されざる行為だが、そこから抱いていたマイナスの人物像は覆った。
とにかく研究の人だったようだ。もちろん、目的が手段を正当化するとは思わないが。
亡くなる直前まで研究を続けていたらしい。
学者たるもの、その専攻の分野で、その進歩につくしたことを残さねばならぬ。
-下巻341頁より引用。
奇怪なことには、日本の研究者のなかには、途中で研究を中止する者がある。
-同上342頁より引用。
この言葉が特に印象に残った。背中を見せる学者だったようだから、この言葉の力は、なおさら大きくなる。
大学は学びの場であるが、学びは一生続く。卒業したらそれで終わりじゃない。
なんというか、覚悟ができた。
研究者になるつもりはないし、そもそもなれるとも思っていないが、個人単位なら研究(学び)は続けられる。そう考えたら、ブログだって同じことではないか。
朝ドラで話題の牧野富太郎をはじめ、偉人たちの名がたくさん出てきた。高校で日本史を選択していて良かった。研究に関する記述も多くあるので、理系の人ならばまた別の面白さを見出すのだろう。
私が一番嬉しかったのは、星新一の幼少期を知ることができたことだ。好きな人のことなら誰だって知りたいだろう。
孫である新一(本名「親一」)が生まれると、良精の日記には新一が頻繁に登場するようになる。どこに出かけたとか、何を買ってあげたとか、熱を出したとか。私も良精の気分で新一を愛おしんでしまった。
ある章では良精の日記に加えて、同時期の星一(良精の娘婿、新一の父)、新一の日記が引用されていて、興味深かった。まさか幼い頃の星新一の日記が読めるとは。
星新一の海水浴デビューの場所が私の地元だったことは私の大きな自慢になるだろう。
星一や小金井喜美子(森鷗外の妹、良精の妻)に関する記述も随所に見られたので、『人民は弱し 官吏は強し』、『明治・父・アメリカ』、『三十年後』、『泡沫の歌』を読み返したくなった。
長山靖生さんの「解説」を含めて、とても良い本だった。
今週の些事
・昨日観た『ピタゴラスイッチ』、冒頭の間がやけに長かった気がする。
<了>