釣り/の季節/の女

昨日見た夢の話と最近観たドラマの話は、始めたらキリがない。

だが、たまにはいいだろう。

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前回は探偵モノ中心だったので、今回は刑事モノでいこう。

 

入江信吾 脚本

『相棒』でデビューした入江信吾さんの脚本作品を観た。

 

釣り刑事 ~竿に掛かった大悪党!!~

潜入捜査をしたかと思えば、逆トリックを仕掛けて真犯人を釣り上げる。探偵さながらの活躍を見せる元刑事のペンションオーナー・鈴木五右衛門。警察幹部による不祥事の隠蔽やアリバイ偽証が複雑に絡み合った物語。友釣りや棲み分けなど釣り要素も満載。これは釣りビジョンでも放送すべき。

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釣り刑事2 ~愛と悲しみの魚たち!~

注目を浴びたいがために、担当する女優に嫌がらせをした元子役のマネージャー。かつての共演者(女優)に忘れられていた(実際にはそうではなかったが)という動機と、会見を機に派手になったという五右衛門の着眼点が面白い。自身の著作がきっかけで事件が起きてしまったことを気に病む小説家の“事件”の方も面白かった。流れていない筆跡、漢字の違い、ペットの勘違い、招待状の逆トリックなど。

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釣り刑事3 ~トランクルームに隠された秘密!~

犯罪被害者が、自分が被害を受けた事件の犯人の身元引受人を買って出た。この異常事態が謎として面白い。脱税の事実を隠すために被害者が強盗の被害額を過少申告し、その結果あるべきはずのない大金が残る。使われる当てを失った大金が新たな事件を引き起こし・・・・・・。

これはねえ、ホントにため息が出るくらい面白かった(実際出た)。「波紋」(『相棒』S4#7、入江さんのデビュー作)っぽくはあるんだけど、それよりは複雑で。でも、登場人物や(過去のも含め)事件に一切の無駄がないからすんなりと納得できる。“捨て”の人物がいないどころか、すごろくのマスのごとく同じ人物に何度もスポットが当たる。まさしく人間ドラマ。大金の果ても、それに気付くきっかけも良かった。

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釣り刑事4 ~隠ぺい工作のつけ~

犯人の自殺で決着をみた、ストーカーによる無理心中未遂事件。過去のストーカー事件と、死の直前の犯人の不自然な動きが五右衛門を真実に導く。川魚の解剖や釣り人ネットワークなど釣り要素が満載。サイドストーリーも面白かった。

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釣り刑事5 ~二つの事件と二つの過去!?~

失踪人捜しを依頼される五右衛門。遺体として発見されてしまうパターンかと思いきや、まさかの成り代わりトリック。凄すぎる。見事にやられた。戸籍を車にたとえて事件を整理するところがとてもわかりやすかった。犯人が釣り大会で釣られてしまうあたりが、このドラマの特色か。観ていくうちにどんどんと愛着が湧いてくる。

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入江さんがエキストラとして出演されていたらしい。気付かなかった。

 

釣り刑事6 ~10年前の事件は冤罪だったのか!?~

殺人容疑で逮捕される五右衛門。刑事が医者を連行したことで助からなかった命があったというのはかなりシリアスだ。医者が事件に無関係だったとしたら、刑事には失われた命に対する責任がある。その一方で、医者が真犯人だったとしたら、刑事がかつて逮捕した人物は冤罪だったことになる。難しい問題だが、上手く描かれていた。五右衛門のアリバイがラストに繋がるのもきれいだ。

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釣り刑事7 ~切り取られた舌の謎!?~

毒舌キャスターが舌切り殺人の被害者に。凶器の形状の違いと死亡推定時刻から事件は思わぬ方向に・・・・・・。私怨で行動する週刊誌記者の哲学と、皮肉な結末がなんとも。勘違いで妻が夫を殺してしまうというのも、これまた皮肉。冒頭の仕草が真相解明の糸口になっていたのが気持ちいい。このシリーズはハズレがない。

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新・信濃コロンボ 追分殺人事件

原作は未読。だが、原作はあってないようなものらしい。『釣り刑事』シリーズのようにオリジナルで面白いものが書ける脚本家の方が、「原作」の二文字とトリックの現代化に縛られてしまうというのはなんだかもったいない気がする。犬の謎と来場者アンケートを用いた身元の特定が印象に残った。

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入江さん、好きです。

 

横山秀夫 原作

横山さんのD県警シリーズを読んだ。その解説でドラマ化の情報が紹介されていた。原作とドラマ版の違いを比べるのも面白いかな、とふと思ったのでやってみた。

 

陰の季節(上川隆也版)

尾坂部元刑事部長の娘(原作ではセリフすら無かったはず)が二渡のバディ的立ち位置になっているという大胆なアレンジ。とある事件の被害者のひとりでありながら、快活な性格をもって父親の秘密に迫る。一連の事件にもアレンジが。“泣いた女を魚のように始末する”というインパクト大の殺人鬼が登場。ドラマ版も面白かった。

 

陰の季節2 動機

同名短編小説の主人公が二渡に変更されて、「黒い線」(『陰の季節』所収)と組み合わされていた。似顔絵偽装疑惑にストーカーという新たな要素が加えられていた。尾坂部道夫がレギュラーメンバーとして登場。七尾が二渡の同期という前作からの設定も効いていて、ドラマとして面白い。

 

陰の季節3 密告

曾根警部と密告候補者二名の関係、二渡と柳の関係が原作と少し異なる。けじめと再生の物語。このシリーズはリミットサスペンスとしても楽しめる。

 

陰の季節4 失踪

原作は積んでいるため未読。やはり、けじめの物語は胸が熱くなる。

 

陰の季節5 事故

「鞄」(『陰の季節』所収)の主人公・柘植が、二渡の部下・上原の同期という設定に。二渡に対抗心を燃やすあまり暴走してしまう柘植。原作は柘植自身が嵌められたことを悟る場面で終わるが、本作では二渡が陰謀を暴いて柘植の窮地を救っている。生き方を改めた柘植のラストが泣ける。このシリーズは観ていて気持ちがいい。

 

陰の季節6 刑事

原作は未読。後に制作された仲村トオル版との違いが面白い。

 

陰の季節7 清算

原作は未読。不倫疑惑の渦中にあった警部が捕物の最中に銃撃され、搬送先の病院で死亡した。彼の点滴にはラベルを貼り替えた痕があり、殺人疑惑が浮上する・・・・・・。被害者の属性が捜査を鈍らせるというパターン。見事にやられた。

 

逆転の夏

殺人を犯した過去を持つ男に掛かってきた、殺人依頼の電話とその裏に隠された陰謀。男は再び罪を犯してしまうのか・・・・・・。主人公の男の職業が異なるが、原作との大きな違いはなかった。谷川俊太郎の「生きる」がラストシーンで引用されていたのが印象に残った。電車のシーンも泣けた。

 

永遠の時効

原作は未読。未単行本作品らしい。とある事件の現場検証の最中、水没した乗用車が発見されて、車内からは白骨化した遺体が・・・・・・。取り調べの場面から漂う微かな違和感がラストにつながる。ストックホルム症候群の亜種、レジュメに書かれた謎の数字、タイトルの意味。どれも面白かった。

 

陰の季節(仲村トオル版)

「陰の季節」と「黒い線」に連続殺人がミックス。尾坂部の未解決事件の中にロクヨンの名前が。どうやら映画と連動しているらしい。残念ながら映画は放送されなかった。

 

刑事の勲章

「動機」(『動機』所収)と同名短編のミックス。前者の主人公が二渡に変更されている点は上川隆也版と同じだが、後者のパートでは上原(二渡の部下)が主人公的ポジションになっている。『陰の季節6 刑事』では二渡が主人公であり、同じ立場になった時の二渡と上原の違いが面白い。かなり複雑な話だった。

 

同一原作のドラマでも脚本家によるアレンジの違いがあって面白かった。

 

新・科捜研の女2

観そびれた第一話と第二話が放送されたので観た。

 

「疑惑の女刑事!誤射それとも殺人?それは18年前の夏の夜に起こった! 京都~信楽高原を結ぶ殺意の点と線」

タイトルの長さがいかにも初回スペシャルといった感じ。所長交代の瞬間をようやく観ることができた。土門さんと谷口刑事のコンビが今観ると新鮮で面白い。

 

「VS文化財Gメンの女!二つの凶器に潜む血の涙の秘密」

榊所長、本格始動。マリコとの親子のシーンが面白い。土門さんが令状の後取りをしていて、右京さんみたいだなと思った。流石は櫻井武晴

 

全編を通して面白いシーズンだった。コメディとシリアスの路線変更を繰り返しながらこれほどまでに成功しているドラマシリーズは珍しいのではないだろうか。

現在放送中の最新シーズンももちろん観ている。『科捜研の女』が水曜9時の枠に移動してきたことで『相棒』と放送時期が被ることがなくなった。より豊かな一年になりそうだ。

 

 

観てから一か月くらい経っている作品もあるので、ふわっとした感想しか書けていないものは、まあ、そういうことだ。逆に、私が面白いと思ったトリックやストーリーは今でも鮮烈に記憶されているわけで、そういう意味で、日が経ってから感想を書くというのも効果的かもしれない(何に?)。

 

 

<了>