自室はおろか専用の本棚も持っていないので、本の収納場所に困窮している。
サイドボードの引き出しが埋まり、段ボールが埋まり、遂に机上にまで侵出してきた。
流石にこれではまずいと一念発起し、机の下の棚?にあった物をソファの下に隠蔽してスペースを確保した。
そこに積ん読を移動させた。
その結果がこれだ。
これ全部、未読の本。おかしいよね、この量。
画面外にも数十冊の積ん読がある。
自分が何かに取り憑かれていたとしか思えない。そう思いたい。
移動という名の片付けをした結果、自分にドン引きしてしまった。
おかげで本を買う気が失せた。むこう数年は彼らと向き合っていこう。
古畑のデアゴスティーニを買った。
本を買わないと宣言をした舌の根の乾かぬ内にかさばる物を買ったのにはわけがある。
私はここ二か月ほど、古畑のブルーレイボックスを買おうかどうか迷っていた。
私調べでは、中古のDVDボックスをそろえたときと値段があまり変わらないのだ。
しかし、それでも40,000円を超える。
もしこれを買ったら、我が半生で最も高い買い物をしたことになる。
これでは誰でも躊躇する。
ちょうどその頃、本をオーバーバイしていたことを思い知った。
自ずと、膠着状態に陥った。
そんな時、日本映画専門チャンネルで古畑が一挙放送されることを知った。
そもそも、このチャンネルで古畑の面白さを知ったことがこの問題の発端なのだ。
だったら、一挙放送を録画すれば良いのではないだろうか。
録画はタダだ。この場合、タダに勝るものは無い。
決断してからは早かった。
数十時間ぶんの録画容量を確保するべく、消しても家族にバレなさそうな番組を選んでは消しまくった。
この文章を書いている時点で、第一シーズンの録画が完了している。
この調子なら大丈夫だ。
日本映画専門チャンネルで古畑を録画するメリットはふたつある。
ひとつ目は、画質が良いこと。昔の作品なのでDVDとブルーレイでは画質の差はさほど出ないと思うのだが、このチャンネルのはデジタルリマスター版なので、画質はたぶんブルーレイと変わらない。少なくともDVDよりは良い。
ふたつ目は、次回予告が流れること。このチャンネルのは本編の後に次回予告が流れる(各シーズンの第一話とスペシャル回の一部、CSで再放送されない回とその次回の予告は除く)。次回予告はデアゴスティーニで初めてパッケージ化されたらしいので、この点ではDVD版とブルーレイ版より一歩リードしている。
インタビューやコメンタリーなどの特典映像は無論放送されないが、私としてはこれで満足だ。
問題は日本映画専門チャンネルでは再放送されない回があるということだ。
そして、それを解決してくれたのがデアゴスティーニというわけだ。
一巻につき二千円弱と、バラ売りのDVDを買って補完するよりも安く済むという算段。
どうしていままで気付かなかったんだろう。
デアゴスティーニでの収録からももれてしまった「古畑任三郎 vs SMAP」はバラ売りのDVDを買った。
これで完璧。
デアゴスティーニが六巻とDVDで、大体15,000円くらい(アマゾンの割引を使い、ポイントバックキャンペーンにもエントリーした)。
決して安くはない買い物だが、40,000円を払おうとしていたことを考えれば・・・・・・、まあね。
せっかくなので初見エピソードの感想を。
「赤か、青か」
爆弾犯が爆弾のエキスパートとして現場に招集されたことは古畑にとっては幸運だったが、それを「都合がいい」と思わせない緊張感とスピード感があった。そして、犯人と現場の「近さ」こそが、視聴者に対する動機解明のヒントであった。伝説のラストシーンのほかにも見どころ満載だった。
『相棒』の三浦刑事役でお馴染みの大谷亮介さんが出演されていた(マガジンのコラムでは「三浦警部」となっていたが、これは誤り。三浦刑事はレギュラー出演最終回の「ビリーバー」(S12#1)で警部補に昇進するまでずっと巡査部長だった)。
「間違えられた男」
密室トリックを駆使した雪山の山荘での殺人には一切触れないという、斬新さ。計画外の殺人で古畑に目をつけられ、執拗に追い回される犯人が気の毒だが笑える。『相棒』の「ついてない女」(S4#19)と比較してみると面白いかも。
「赤か、青か」で言及された古畑の変なボウリングフォームが遂に披露された。
展開といい、小ネタといい、『相棒』とはまた違う自由さに満ち溢れていた。
「消えた古畑任三郎」
第一シーズンと第二シーズンの犯人が新録映像で総出演する、豪華すぎる総集編。それでいて新録部分に古畑が一切登場しないという、これまた斬新過ぎる展開。事件関係者が謎のインタビューに答えるという構図は『相棒』の特別編と通ずるものがある。
私の記憶の奥底にあった「矢を折る古畑」のイメージは、やはりこの回のアバンタイトルだった。スッキリ。
見た目の“かさ”に騙されるエレベーターのトリックや裏切者探しなど、盛りだくさんな2時間16分だった(あっという間だった)。
実在の人物を書く、自分を演じるというのはどういう気持ちなんだろう。
「古い友人に会う」
犯行を未然に防ぐという、究極の倒叙。本当はこの回を第三シーズンの最終回にするつもりだったとか。ゴールデンレトリバーの万五郎をはじめ、第一シーズン第一話「死者からの伝言」との共通点が多く、マガジンも読み応えがあった。
カラオケの場面を観て、西園寺君がより好きになった。
「フェアな殺人者」
イチローが本人役で登場。サインが手がかりになるなど、SMAPの回と共通点が多い。観ていくうちに何がフェアで何がフェアじゃないのかわからなくなってしまったが、強靭な肩や俊足などイチローナイズドされた犯行と、それを逆手に取った犯行の証明が面白かった。
「古畑中学生」
古畑の中学時代を描いた作品。倒叙ミステリではないが、ある意味で倒叙がミスリードになっている。殺人は起きないが、全てが繋がっていく感じは『古畑任三郎』と変わらない。圧巻の耳毛連盟。「大人でも楽しめる」と言うとなんだか陳腐だが、全くその通りだった。
ホームズを読まねば。
どれも面白かった。
再放送されない回は、より面白く感じる。それは『相棒』も同じ。
とにかく、買った甲斐がありまくりだった。
最後に宣言します。
もう、むやみと本は買いません。もう、寸借詐欺には遭いません。決して。
<了>