衝撃の「中止」から一週間。
私は再び卒検を受けた。
結果から言えば合格だった。しかも、なかなかの高得点だった。
ホントに、前回のミスは何だったんだっていうぐらいに順調で。
だから取り立てて書くこともないわけです。
同乗して試験を受けて、しかも点数まで同じだった男性が別れ際に「お疲れさまでした」って言ってくれたのは嬉しかったな。
ああいう妙な連帯感、めっちゃ好きだ。
卒業式も滞りなく終わって、三か月に及ぶ教習生生活はあっさりと終わった。
お花のアーチをくぐりたい気分だったが、ここはクールに。
誰とも会話せずに即行で帰った。中学の卒業式を思い出した。
そういえば教習所で中学の同級生を見かけたが、特に何もなかった。
仮免試験の時に欠席していた友人(同姓同名の別人?)とも、結局会えずじまいだった。
再会も感慨もない。案外こんなものなのだろう。
さらにその一週間後。
私は最寄りの運転免許試験場にいた。
もちろん、本免の学科試験を受けるためだ。
最寄りとはいっても、家から電車で一時間半はかかる僻地だ。
しかも、一度も訪れたことのない土地。
早起きして、知らない電車で知らない土地へ。模試や英検の日を思い出した。
方向音痴の私にしては恐ろしいくらいスムーズに到着した。
免許の更新に訪れた人々を尻目に、受付会場に向かう。
平日だったにもかかわらず、かなり混んでいた。
あたふたしながら手続きを進めていく。
本人確認で生まれ年の干支を聞かれて、一瞬答えにつまる。
もちろん答えられた。でも、意表を突かれた感は否めない。
中には生まれ年の干支を知らないという人もいるのではないか。
そういう人はどうなるのだろうかと、老婆心ながら考えてしまう。
人が多く騒がしかったので、誰も彼も半ば叫びながら手続きを進めていく。
視力検査も叫びながら。「右!下!上!」
この人数をさばくのは、大変そうだ。
いよいよ学科試験。
完全に初見の問題も多少あったが、その他は「これ、進研ゼミでやったところだ!」状態だった。
即行で問題を解いて、一番に教室を出た。中高の時に憧れた、デキるやつの振る舞いだ。
夢がひとつ叶った。
どうしよう、これで落ちてたらめっちゃ恥ずかしいな。
しかし、それは杞憂だった。
私は合格していた。しかも、満点だった。
すごい。人生のピークかもしれない。
その後が、まあ長かった。
書類の発行に不安になるくらいの時間がかかり、何やかやで免許を受け取ったのはその日の合格者のうちで最後だった。
これはこれで、印象深い。
ここでも感慨には浸らず、即行で帰った。
オンライン授業の開始時間が迫っていたからだ。
忙しないねえ。
今週の読了本
石持浅海さんの『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』-碓氷優佳シリーズ第四弾。
横浜にある女子高に通うわたし、上杉小春には碓氷優佳という自慢の親友がいる。美しく聡明な彼女はいつも、日常の謎に隠された真実を見出し、そっと教えてくれた。赤信号のジンクス、危険な初恋、委員長の飲酒癖、跡継ぎ娘の禁じられた夢、受験直前の怪我、密かな失恋・・・・・・。教室では少女たちの秘密が生まれては消えてゆく。名探偵誕生の瞬間を描く青春ミステリ―の傑作。
-裏表紙より引用
受験にまつわるジンクスは何故生まれたのか-「赤信号」、友人の恋の行く末を予言する「夏休み」、学級委員長の秘密を看破する「彼女の朝」、同級生の恋から意外な真実を導き出す「握られた手」、漫画家志望の友人は何故志望校を上げたのか-「夢に向かって」、受験直前に骨折してしまった友人の心境の変化のわけを見抜く「災い転じて」、慰労会での“想い人当てゲーム”が小春に戦慄の真実を悟らせる「優佳と、わたしの未来」の七編。
同級生の視点で、碓氷優佳の原点の三年間を描いた連作短編集。
倒叙ではない日常系のミステリだが、彼女の冷たい洞察力が昔から健在であることが実感できる。
石持浅海作品や若竹七海作品では、私にとって馴染みのある地が舞台になっていることが多い。この本も例外ではなかった。
あとニ冊、ぐにゅ。
<了>