『ドラマ』は映人社から発行されている脚本専門の月刊誌である。毎月、旬のドラマのシナリオや脚本家のインタビュー、エッセイなどが掲載されている。月刊『シナリオ』の姉妹誌であり、ほぼ毎年『相棒』のシナリオが掲載されている。
『ドラマ』を置いている書店はそこまで多くはない。バックナンバーともなれば、それなりの古書店やネットで購入するしかない。
ブックオフオンラインを張っていたら未入手の『相棒』掲載号が入荷したので購入した。
今回買ったのは、シーズン12のシナリオが掲載された号とシーズン15のシナリオが掲載された号。
シナリオを基にドラマが撮られ、それを基にノベライズ化が行われるので、シナリオを読めばドラマ本編でカットされ、ノベライズ版からも漏れたシーンを知ることができる。
『ドラマ』の醍醐味は、実際に放送されたものと内容を比べて変更点を見つけることである。
ということでブックオフオンラインで購入した二冊と、買ったものの読めていなかった号を併せて検証する。
該当する回を流しながら、同時進行で読み進めていく。細かな違いが結構あるので、適宜、一時停止をして確認。
放送内容との違い
今回見つかった変更点や新事実をこれまでに読んだものと合わせて、ごく簡単に記す。
※ネタバレあり
「聖域」(脚本:輿水泰弘)
カイト君がバールではなくナイフで武装している。
「オークション」(脚本:戸田山雅司)
カイト君が角田課長に対して愚痴をこぼすシーンがある。
「ビリーバー」(脚本:輿水泰弘)
“火の玉大王”のオフ会に参加していた女性が関西弁ではない。
「かもめが死んだ日」(脚本:輿水泰弘)
酒田鉄平の小西皆子殺しの供述が詳細。
「崖っぷちの女」(脚本:金井寛)
合鍵が隠されていた場所が表札の裏ではなく配電盤の中。「であるならば」のくだりが無い。わさび多め、塩分控えめ。
「右京さんの友達」(脚本:真野勝成)
右京さんが毒島幸一に「ドラえもん」呼ばわりされている。
「ストレイシープ」(脚本:真野勝成)
右京さんが刺又で取り押さえられている。
「鮎川教授最後の授業」前後篇(脚本:輿水泰弘)
鮎川邸で地下室を探すも見つからずカイト君が声を荒らげるシーンがある。社“マリア”は漢字で“真利愛”。
「守護神」(脚本:輿水泰弘)
伊丹と芹沢が三浦について話すシーンがある。来栖初恵が頸動脈を掻き切ったのはトヨの助言。
「声なき者」前後編(脚本:太田愛)
右京さんが対局途中のチェス盤を写真に収めるシーンが無い。
「検察捜査」前後篇(脚本:輿水泰弘)
田臥検事の立件宣言に対して、右京さんが「いつでも受けて立ちますよ」と言うシーンが無い。むしろ弱気。
「辞書の神様」(脚本:神森万里江)
大鷹公介がレストランでの食事中に言葉探しをして家族を呆れさせたというエピソードが描かれている。
「ブラックパールの女」(脚本:山本むつみ)
本人訴訟の事例として冠城君と連城弁護士がロス疑惑について言及している(放送ではカットされているがノベライズ版では復活している)。「目撃しない女」(S16#9、脚本:山本むつみ)での新崎芽衣救出シーンが挿入されている。
「うさぎとかめ」(脚本:森下直)
日下部事務次官による主流派・反主流派の説明が詳細。
「アレスの進撃」前後篇(脚本:輿水泰弘)
青木がロシアンルーレットでトリップするシーンがある。
「ご縁」(脚本:斉藤陽子)
脅しのネタが傷害沙汰ではなく医療ミス。
「プレゼンス」前後篇(脚本:輿水泰弘)
万津幸矢のコスチュームが“ゲッコーメン”ではなく“怪人蜘蛛男”。
「超・新生」(脚本:輿水泰弘)
芥千壽とディートハルト・フィッツェンハーゲンは架空の人物。
「光射す」(脚本:池上純哉)
青木が“こてまり”に来店している。
「マイルール」(脚本:森下直)
福山光一郎が積極的にテレビ出演していたというエピソードが描かれている。
「冠城亘最後の事件ー仇敵」前後篇(脚本:輿水泰弘)
特命係が王隠堂鷹児の死を検証するシーンがある。
放送時間の関係でシーンの増減が激しかったとのこと。輿水先生のメッセージを含めて、ここでしか読めない完全版なので全員に読んで欲しい。
上記以外にも各号、細かな違いがたくさんあるので楽しめる。他にも、脚本家による創作秘話なども掲載されているので要チェック。シーズン11よりも前の号は未入手なので、劇場版作品のシナリオが掲載されている『シナリオ』とともに引き続き集めていきたい。
※掲載号の詳細は下記の『相棒』掲載シナリオリストを参照。
シナリオ傑作選
選りすぐりのシナリオの決定稿が掲載された書籍も出版されている。こちらは比較的容易に入手できるので是非。
<『相棒』シナリオ傑作選 pre season-season7> (2011年、竹書房)
収録内容
「刑事が警官を殺した?~」「Wの悲喜劇」「特命」(PS#1、S5#13、S7#19、脚本:輿水泰弘)
「殺しのカクテル」「ありふれた殺人」(S1#7、S3#11、脚本:櫻井武晴)
「人間消失」(S1#9、脚本:砂本量)
「せんみつ」「蟷螂たちの幸福」(S5#4、S6#3、脚本:戸田山雅司)
「バベルの塔~」「密愛」(S5#11、S7#15、脚本:古沢良太)
※「ありふれた殺人」「せんみつ」は『ドラマ』2008年2月号にも掲載。
輿水泰弘、櫻井武晴、松本基弘・西平敦郎、戸田山雅司、古沢良太 インタビュー
<『相棒』シナリオ傑作選2> (2011年、竹書房)
収録内容
「秘書がやりました」「ピルイーター」(S2#11・18、脚本:輿水泰弘)
「殺人晩餐会」(S2#3、脚本:櫻井武晴)
「ついてない女」(S4#19、脚本:古沢良太)
「クイズ王」(S2#12、脚本:深沢正樹)
「犯人はスズキ」(S5#3、脚本:岩下悠子)
「怪しい隣人」(S8#17、脚本:徳永富彦)
「越境捜査」(S7#11、脚本:ハセベバクシンオー)
「最後のアトリエ」(S9#3、脚本:太田愛)
※「ついてない女」は『ドラマ』2008年2月号、「最後のアトリエ」は『ドラマ』2011年2月号にも掲載。
輿水泰弘、櫻井武晴、戸田山雅司、古沢良太、深沢正樹、岩下悠子、徳永富彦、ハセベバクシンオー、太田愛 インタビュー
松本基弘×伊東仁×西平敦郎×土田真通 座談会
放送内容との違いもさることながら、各脚本家へのインタビューや座談会など脚本家の人となりや執筆スタイル、着想が知れるコンテンツが目白押し。控えめに言って、永久保存版。
まとめ
ノベライズもいいけど、シナリオもね。
<了>