いろいろマガジン

まだまだ読みます、『相棒』関連雑誌。

時は流れ、右京の相棒は亀山薫から神戸尊に。

 

まずはこちら、『刑事マガジン vol.8』(2009年、辰巳出版)-事実上の最終号。

ブックオフオンラインで購入。605円。

松本基弘 プロデューサー P28~30

放送中の『相棒 season8』についてのインタビュー。

・<新相棒>神戸尊について。「及川さんには、以前、ゲストとして『相棒』に出ていただきたくて、お話ししたことがあった」

・初登場がシーズン7の最終回スペシャルだったことについて。「そもそも及川さんはコンサートをやっている最中で、スケジュールの問題もあったんですが、そういう悪条件を逆手にとるのは得意な『相棒』チームですから(笑)、だったら最終回にしてやれと、思いつきました」

・シーズン8初回スペシャルは「内山理名ありきで作った話」

 

30頁より引用。

杉下右京のフィギュアとKUBRICKの宣伝コーナーもあった。この時期だったんだ。

六角精児 P31・32

米沢守役の六角さんへのインタビュー。スピンオフ映画『鑑識・米沢守の事件簿』と新相棒、シーズン8について。

・「捜一の人達とは、あまり飲まないことにしているんです。長いことやってますしね……。そんなに一緒にいなくてもね……(笑)。大谷(亮介)さんとは、行ってる飲み屋が同じなので否が応でも会うんですけど(笑)」『刑事マガジン プラスワン』の「トリオ・ザ・捜一インタビュー」を読んだばかりなので味わい深い。

 

season7 全話紹介 P33~37

全19話のストーリー紹介。初回放送日、脚本・監督の名前も載っている。

『~プラスワン』の「『SEASON Ⅳ』全話ガイド」にはあらすじが載っていたが、本号では解説文も。読み応えあり。

 

 

お次はこちら、『Quick Japan Vol.92』(2010年、太田出版)-SUBCULTURE

ブックオフオンライン。110円。

特集 『相棒』が相棒を変えた理由

シーズン9放送開始と劇場版Ⅱの公開決定を記念した『相棒』特集。

 

『相棒』の世界観と凄みが生まれる場所で P130~133

シーズン9の撮影現場リポート。文字数と熱量がすごい。『相棒』の特異性が東映東京撮影所、すなわち「往年の日本映画界の撮影所システムとの「近さ」」に由来しているという指摘は初めて目にしたが、かなり鋭く、説得力を感じた。水谷さんと及川さんの“セッション”の様子も臨場感を持ってリポートされている。

 

中年としてカッコ良く生きるための大きな賭け 及川光博 P134~139

ロングインタビュー。「及川光博が相棒に選ばれた意味」「『相棒』という作品の中でどう機能するか」「セルフプロデュースの場がある幸せ」「賛否両論に対する心構え」「歳を重ねて失うもの 手に入れるもの」

・「賛否両論には慣れているんです(笑)。とはいえね、やはりそれで数字がついてこなかったら、どうしても自分を責めてしまう。だから、初回の結果にはホッとしたし、あとは何と言っても、最終回が二〇%を超えたっていうニュースを聞いた時。ほんとに、涙が出るくらい嬉しかった」初めての相棒交代。新相棒のプレッシャーは想像を絶するものだったのだと、今更ながらしみじみ。

 

「前へ進むためにはある種の勇気が必要なんです」 水谷豊×和泉聖治(監督)×松本基弘(テレビ朝日プロデューサー) P140~143

座談会。「「あえて」壊す決意」「チームの合意で動いていく」「『相棒』でしかできない感情の繋がり」「世界観を色濃く詰め込んだ劇場版」

・シーズン9は「これまでと全然違うテイスト」

・「やっぱりひらめきが出ないと心配なんですよ。及川君はあまりにも意外な名前だったので。でもふっとね、「あっ、いけるな。豊さんと合うな」とひらめいた」

・和泉監督「「でも、これいいのかな?警視庁から目を付けられないかな」とかは考えますけど(笑)」

最後に冗談半分でシーズン20への言及がなされている。実現していることの驚異たるや。

 

捜査一課の面々が『相棒』を斬る! 川原和久×大谷亮介×山中崇史 P144・145

座談会。「捜査一課との関係にも変化の兆しが」「演劇系が脇を固める力」「三人三様の色を出していきたい」

・「コメディ的な台詞があった時でも、これはちょっとやり過ぎだろうみたいなところで、現場で止めたりすることもありますからね。昔、僕らが悪乗りして暴走した時に、監督から「もうちょっとシリアスにしてほしい」って言われて反省したこともありますし。だから、そこもバランスなんですよね」

・川原さん「自分が正直に思うのは、スピンオフに関しては米沢守で使い切ったかなって思いますね。本編の話も劇場版Ⅱ、「Season9」と大変なことになってるし、もうスピンオフはやらないほうが潔いと思います。もし振られたら……それはやりますけど(笑)」3年後には『X DAY』が公開していると思うと感慨深い。

 

 

最後はこちら、『ハヤカワ ミステリマガジン No.659』(2011年、早川書房)-MYSTERY

メルカリで購入。

特集 相棒 特命係へようこそ

「編集後記」で触れられているが、同時期に発売されたノベライズ作品『相棒 season7 中』の解説はこの雑誌の当時の編集長である小塚麻衣子さんによるものだ。その解説によれば『ハヤカワ ミステリマガジン』で「日本の、しかもドラマの特集を組むというのは五十五年の歴史で初めて」とのこと。

関係ないけど、小塚さんのデスクがすごい。

www.e-aidem.com

 

『相棒 -劇場版Ⅱ-』を語る 水谷豊・及川光博 P12~16

巻頭カラーインタヴュー。

・及川さん「尊は、発想としては子どもっぽい人間だと思うんですよ。右京に対しては自分よりも優秀な頭脳の持ち主への憧れと、それを追い越してみたいという嫉妬の感情があると思うんですよね。(中略)たぶん今までは、ただ出世して官僚になることを考えていたと思います。その彼が変わっていったきっかけは、杉下右京に他ならないでしょうね」

・水谷さんが好きな映画は『デストラップ 死の罠』。是非、観なければ。

 

ミステリファンにとっての龍宮城 千街晶之 P17~20

ミステリ評論家の千街さんによるエッセイ。というより、もはや分析批評。キャラクター、トリック、モチーフ、オチ、キャスティング、倒叙バカミススペシャル版、サブタイトル、小説版。わずか4ページであらゆる要素への言及がなされている。

新発見あり、読み応え抜群。ただ褒めているだけではないのだが、確かな分析のあとなので、読んでいて「なるほどな」となる。こういう文章が書けるようになりたい。

・「『相棒』は基本的に、さまざまなミステリの先例に敬意を表しつつ、それを見違えるような新しい姿に再構築するのが得意なドラマと言えるだろう」千街さんによる『相棒 season4 下』の解説「『相棒』のフォーマットに限界はあるか」でも同様のことが述べられている。私はフックやトリック、トラップ(言ってしまえば「刑事ドラマあるある」)の組み合わせに面白味を感じる質なので、「再構築」という言葉に得心が行った。

 

杉下右京四つの謎 司城志朗 P22・23

『相棒 -劇場版-』のノベライズを手掛けた小説家の司城さんによるエッセイ。「“花の里”は、なぜつぶれないのか」「宮部たまきは、本当に右京の別れた妻か」「右京はどこで捜査方法を学んだか」「右京の出自はどこにあるのか」という四つの謎の解明を通して右京の正体に迫る。

かなりのトンデモ説だが、司城さん自身がそれを承知で淡々とぶっ飛んだ推理を展開しているので(本気だったらごめんなさい)、気づいたら惹きつけられていた。

大学一年の時、探偵脳が過ぎていた私は、映画版『マイ・フェア・レディ』を分析・発表する課題で「ヒギンズ教授はもともとイライザに目をつけていた」という説を披露して教室中の顰蹙を買ったことがあるのだが、もっと真面目顔で、堂々と開陳していればトンデモ説でも押し通せたのだろうかと、今更ながら考える。

 

ノベライズ作家から見た『相棒』 碇卯人 P24・25

朝日文庫の『相棒』ノベライズシリーズおよび杉下右京が主人公のオリジナル小説シリーズの著者としておなじみの碇さんによるエッセイ。『相棒』が競作?形式であること、その理由・特色の説明から、どのようにノベライズがなされるか、お気に入り三作品の発表まで。

ですます調だからか、司城さんのを読んだあとだからか、とても折り目正しい文章に思える。説明が丁寧でとにかくわかりやすく、この人があのぶっ飛んだ『隠蔽人類』の著者だとは到底信じられない。

・「映像と脚本が食い違っているとき、基本的には最終成果物である映像のほうに準拠して小説化するように心がけています。しかし、脚本家の中には決定稿にこだわる方もいて、申し入れがあれば映像ではなく脚本のほうを優先する場合もあります」こうしてファンの楽しみがひとつ増える。久々にノベライズを読み返したくなってきた。

 

全シーズン紹介 P26~35

プレシーズンからシーズン9まで、各シーズンの紹介が1ページずつ。筆者は書評家の三橋曉さん(PS・S1)、翻訳家の白須清美さん(S2)、文芸評論家の末國善己さん(S3・5~8)、コラムニストの香山二三郎さん(S4)。

シーズン9の紹介は編集部によるもの。元日スペシャルの放送前ということ、おそらく執筆時期の関係で言及は第1~4話にとどまっているが最後には「神戸の立ち位置の変化にも注目したい。今までも大胆な展開で視聴者を驚かせてきた『相棒』である。このままおとなしく杉下の相棒におさまるとは考えにくい」という鋭い指摘がなされている。

どの紹介文も、読み応え抜群。ミステリマニアに『相棒』への門戸を開くためか、同系統のミステリ小説や作家を例に出してストーリーが紹介されているのが『ミステリマガジン』ならではか。未読の書ばかりなので、そのうち手を伸ばしたい。

 

奇妙な手紙の事件 コリン・デクスター 鈴木恵/訳 P36~44

今は亡きモース主任警部の元相棒であるルイス警部のもとに「イギリス探偵作家クラブ」の元会長キーティングから手紙が届いた。キーティングはモース警部を通じてルイスを知ったらしく、手紙は、クラブ会員の中にいる小切手帳泥棒を突き止めて欲しいという内容だった。ルイス警部と部長刑事のハサウェイは手紙の“解読”を始めるが……。

杉下右京は一切登場しないが「海外で活躍する“相棒”たちの短篇」として特集に組み込まれている。アルファベットが鍵となる暗号モノであり、どんでん返しもあるのだが、オチがよくわからなかった。……ray?……fray?……すり減らす?

AXNミステリーで『ルイス警部』というドラマを観たことがあるのだが、どうやら『主任警部モース』のスピンオフ作品だったようだ。原作があったとは。

www.mystery.co.jp

 

相棒とわたし 腹肉ツヤ子 P46~51

※目次では「私と相棒」

のちに『相棒 season8 上』の巻末漫画を手掛けることになる腹肉さんによるエッセイ?漫画。「右京さんとの結婚生活」を妄想、キッチンでの小事件を描く。シチュエーションはノベライズ巻末のと同じだが、内容は異なる。自宅の設定なのに神戸君や米沢さんが当たり前のように登場するのが面白い。

 

剃刀ビル ピーター・ラヴゼイ 山本やよい/訳 P52~65

すでに四人の娼婦を殺害している切り裂き魔「剃刀ビル」をおびき出すため、サッカレイ巡査はクリッブ部長刑事の命令で女装、おとり捜査をすることに。その甲斐あって「ビル」は逮捕されるが、言葉が通じないのか完全黙秘。通訳の到着を待つことになる。そんな中、牧師のマウントジョイがサッカレイを来訪、四番目の殺人が別人の犯行である可能性を示唆する。牧師の奇妙な意見に興味を示したクリッブは、早速その夜、サッカレイとともに牧師夫妻を訪問するが……。

『相棒』特集のもうひとつの短篇。こちらのほうが『相棒』っぽかった。強いて言えば、シーズン3の「大統領の陰謀」だろうか。言葉遣いから真の動機を穿つラストがオシャレ。シリーズものらしいので、ほかの作品も読んでみたい。

 

「特命係」は英語で「Special Task Force」

中・高・大と、英語のプレゼンの授業でたびたび『相棒』を取り上げてきたが、いつも「トクメイガカリ」で通していた。もっと早く知りたかった。

 

 

また書きすぎた。

ま、いっか。

 

 

<了>