ポイントハンター

近所にある書店のポイントカード。400円毎に1ポイントで、40ポイント貯まると200円分のお買い物券になる。ポイントサービスには珍しく、利用期限が決まっていない。だから最後の買い物からどんなに期間が空いても、カードを出しさえすれば続きを楽しむことができる(「まだ有効なのか?」という緊張感はあるが)。

厚めの紙でできたカードに直接スタンプが押されると、小学生に戻ったような気分になる。アナログなこのシステムが無性に恋しくなる時がある。

私のカードにはかなりの年季が入っている。ベリベリ財布を使っていた頃からの付き合いなので、もうかれこれ7年以上になる。あと4ポイント。文芸単行本を買えば到達できるが、「終わって欲しくない」と思う自分がいる。次のカードがもらえないかもしれないという不安からかもしれない。第一、私以外の人があの店でポイントカードを使うところを見たことがないのだが・・・。

 

今回買ったのは冨樫義博さんの『HUNTER×HUNTER』(1998年~、集英社)の37巻。ついに出た新刊。

1ポイントもらえたうえ、ジャンプコミックの特製ステッカーももらえた。

しおりとして使おう。

家に帰って裏面を見たら「ナツコミ」の文字が。もう冬だぞ。フェアの開催期間が長いというのも、あの店の特徴の一つだ。冬の日向坂文庫フェアが夏まで開催されていたときには、レアな気がして思わず何冊か買ってしまった。得なのか損なのか分からないが、思わぬところで思わぬ本に出合うと運命的に感じられてしまうのは私だけではないはず。

本題に戻って、新刊について。

前36巻が発売されたのが2018年なので、新刊が出るのは約4年ぶり。

休載期間が最長を記録していたので半ば諦めていたのだが、思ったよりも早く新刊にありつけた。

内容を覚えている自信が無かったので、選挙編から読み直した。ビスケやセンリツが登場することですら失念していたので、いきなり新刊を読んでいたら混乱していただろう。読み直して良かった。

おさらいを一日で済ませ、ようやく37巻へ。あらすじは書く技量も気力も残ってないので省く。クラピカの講習会が進み、王子達の能力が徐々に明らかになり、マフィアの抗争が始まり・・・といった具合。重要そうな人物が多くて、全く先が読めない。いつ、どこで、誰が、誰と闘うのか。誰が、誰に殺されるのか。カバー折り返しの作者コメントはどういうことなのか。心がざわつきっぱなし。

気長に待てるとはいえ、早く続きが読みたいというのが本音だ。

 

ハンターつながりで、今週の読了本。

石持浅海さんの連作短編集『殺し屋、やってます。』(2020年、文春文庫)とその続編『殺し屋、続けてます。』(2021年、文春文庫)。

経営コンサルタントの傍らで殺し屋を営む男・富澤允が、標的がとる奇妙な行動をひも解く異色のミステリ短編集。

殺し屋という、一見時代離れしている存在が巧妙なシステムのもとビジネスとして成立している。そして富澤もプロ意識を持ち、ビジネスとして殺しを請け負う。そこには彼の私情が一切存在しないため、標的への同情一辺倒で終わらない。それどころか富澤を応援している自分がいる。『二千回の殺人』(2018年、幻冬舎文庫)を読んだ時もそうだったが、石持さんの作品を読むと自分の価値観が揺らぐ瞬間が多々ある。

そこが醍醐味なのかもしれない。

aibouninngenn.hatenablog.com

日常の謎が穿たれ、意外な真実が明かされる面白さは「座間味君シリーズ」(2003年~)にも通ずるが、本シリーズの短編では「標的はどっち?」(『~やってます。』収録)など、探偵役が殺し屋でなければ生まれなかった面白さも堪能できる。加えて、富澤以外の人物(依頼人や標的など)の視点で描かれる話もあり、バラエティーにも富んでいる。『~続けてます。』からは富澤の商売敵となる殺し屋も出現する。

こちらも早く続きが読みたい。

 

 

氷川きよし

 

 

<了>