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aibouninngenn.hatenablog.com

上の記事で10/27のアクセス数が「680を超えていた」と書いたが、翌日に確認したら826に増えていた。ヤバすぎる。

 

 

一年ぶりに歯医者へ。

医院は散々通った水泳教室や自動車教習所と同じ町にある。まさに試練の町だ。

 

院内の空気がどこかよそよそしく感じられるのは、内装が変わったせいか。

それとも、定期検診の案内を無視したせいか。

 

いつもの先生に呼ばれ、治療スペースへ。

左奥の歯肉が腫れて歯が閉じなくなってしまったことを話し、大口を開く。

「膿がたまってますね」と先生。え、うみ?

親知らずによって歯肉が持ち上げられているのだとばかり思っていたのだが、まさか膿が原因だったとは。

 

念のためレントゲン写真を撮る。

画像で現状を確認する。見たところ虫歯や歯周病の兆候はないらしい。ひとまず安心。

右下の親知らずは奥歯に向かってほぼ直角に生えていた。私にとっても先生にとっても既知の事実だったので今回は特に問題にならなかったが、レントゲン写真で見ると存在感がすごい。コイツと折り合いをつけられているのは、割に奇跡なのかもしれない。

謎解きイラストみたいになってしまった。

ねじ曲がった親知らずが生えていることは、杉下右京との数少ない共通点だ。

 

問題の腫れ物のあたりには、ぽっかりとスペースが空いていた。レントゲン写真に写っていないから、やはり膿らしい。

先生によれば、親知らずが頭を出しており、そこから細菌が入ったのでは、とのこと。

 

とりあえず、親知らずを抜くような大事ではないらしい。拍子抜けからの大安堵。

 

「じゃあ、膿を出しましょう」と先生。今日中に治療してもらえるなら、ありがたい。

続けて「十一番のメス持ってきて」と助手に指示を出す。え、メス?手術じゃん。

「十一番は滅菌中だったと思いますよ」「そう。じゃあ、予備がないか見てきて」

 

え、待って。手術?そんな覚悟してきてないよ。だって、親知らずだと思ってたから!今日中にどうにかなるやつだと思ってなかったから!紹介状もらって終わりだと思ってたから!待って、手術?麻酔?注射?いやいや。消毒だけでいいです。ホントに。

メスよ、あるな。いや、やっぱあれ。この苦痛が終わるなら俺も覚悟を決める。今、決める。ああ、怖い。やっぱ怖い。どうしよどうしよ。だって親知らずだと思ってたんだもん!即日メスなんて聞いてないよ!ああああああああああ!メスよ、あるな!

 

数分後。

 

「ありました、予備」

あるんかい。

 

そこから先はあっという間だった。メスは使うものの、本格的な手術ではなかった。

腫れ物にメスを入れ、膿を出す。それだけ。

膿を出すために縫合はしていないらしい。鏡を見たら切り痕がはっきりと残っていた。

麻酔が効いていたので、メスの痛みは感じなかったが、膿を出す工程がキツかった。

ガーゼを押し当てられ、腫れ物をグイグイと押されたのだ。あ、顎が、外れそう。

もともとガコガコいっていた左顎が、歯が閉じられないことで悪化していたのだ。

イタタタタタタタタタ!顎とれる!弱いんだって、顎!先生!なんか体重かけてません⁉

 

視界の端に映ったガーゼは赤茶色になっていた。悪いものは、おおかた出たようだ。

 

受付で今後の予約をとる。生憎いつでも空いている。

友達が少ないことは、杉下右京との数少ない共通点だ。

 

抗生物質と痛み止めの処方箋をもらって帰路に就く。

腫れ物はいくらかしぼんだようだが、歯はまだ完全には閉じない。顎の調子も相変わらずおかしい。先生を少し恨めしく思う。本当の戦いは、麻酔が切れてからだ。

 

ところがその後、痛み止めの出番はなかった。麻酔はとっくに切れているのに。あんなにバッサリ切られているのに。こんなことあるのか。

先生は名医だった。恨んでごめんなさい。

 

本当に、親知らずを抜かずに済んでよかった。

いずれ抜くことになるだろうが、とりあえず、今でなくてよかった。

 

今月はいろいろある。

親知らずがまた動き出す前に、やれることをやっておこう。

 

なんだか調子が戻ってきた気がする。

 

 

今週の読了本

三浦しをん さんの『まほろ駅前狂騒曲』-まほろ駅前シリーズ第三弾。

(2017年、文春文庫)

まほろ市は東京都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田と、居候になって丸二年がたつ行天。四歳の女の子「はる」を預かることになった二人は、無農薬野菜を生産販売する謎の団体の沢村、まほろの裏社会を仕切る星、おなじみの岡老人たちにより、前代未聞の大騒動に巻き込まれる! まほろシリーズ完結篇。解説・岸本佐知子

-裏表紙より引用。

「はる」は行天の生物学上の娘だが、ふたりは一度も会ったことがなかった。そのうえ、行天はあるトラウマから小さな子どもに対して恐怖心を抱いていた。そんな折、多田は「はる」の母親・三峯凪子から娘を一か月半ほど預かってほしいと内密に依頼される。行天のこともあり断ろうとした多田だったが、結局、凪子に押し切られてしまう。子どもを預かることになったことを行天にどう切り出したものか、苦悩する多田のもとに今度は星が現れて・・・・・・。

 

飛んでいった布団の回収から畑の監視、子守に見舞いに庭掃除と大忙しの多田便利軒。

便利屋コンビと「はる」との微笑ましい交流や、まほろで巻き起こる大騒動、多田の恋など、メインストーリーもサイドストーリーも盛りだくさんだった。

文庫版には30ページ弱の短編「サンタとトナカイはいい相棒」も収録されており、計500ページ超の大ボリュームとなっている。

 

「完結篇」だと明記されていることもあり、どういう結末を迎えるのかとページをめくる手が止まらなかった。

そして、泣いた。子どもに弱いなんて、年かな。

もちろん、笑った。マスクをしていて助かった。

 

人の縁が続く限り、人の記憶も続いていく。

変わりたいと思う気持ち、変わらないことの居心地のよさ、葛藤、勇気、切なさ。

 

このシリーズを最後まで読んで良かったと、心から思った。

 

 

<了>