こう見えてもこれはタンポポである。子供が書いた、ひらがなの「ひ」ではない。
どう見ても干からびている。
私はこれを友人からもらった。だからといって、これが珍しいタンポポだということではない。ただの干からびたタンポポである。
干からびたタンポポを見たのは初めてだった。にもかかわらず、私にはあらゆるアイデンティティを剥ぎ取られた、この「紐のようなもの」がタンポポだと瞬時に理解できた。
なぜなら私は、このタンポポが地を離れる瞬間を目撃していたからだ。
友人は、おもむろにタンポポをむしり取った。そして、それをジャージのポケットに仕舞った。「記念だ」と彼は言った。何の「記念」なのかは解らなかったが、私は黙っていた。
二か月後、そのタンポポは変わり果てた姿で発見された。奇跡的に洗濯を免れたらしいそれは、ジャージのポケットからリュックの前ポケットへと移動していた。
友人は、私があげたゼリーのお礼にと、そのタンポポをくれた。見返りを期待してゼリーをあげたわけではなかったので、干からびたタンポポとはいえ「お返し」がもらえて嬉しかった。
私と彼の関係は少し特殊だった。
干からびたタンポポは紐しおりに似ている。「スピン」と言ったか、このしおり。
セルフ押し花状態のタンポポを捨てる気は毛頭なかった。
スピンに似ているコイツをいっそのことしおりにしてしまおう。王道の紙しおりに。
百均のラミネートシート(3枚入り)を使う。「相棒カード」のときは予算と度胸が足りなくて断念したものだ。
YouTubeで検索上位にヒットしたラミネートシートの貼り方動画を参考に、私なりの方法で貼っていく。
まずはフィルム(画像右)を剥離紙のついたシール(画像左)から引きはがす。この時点でパッケージに書いてある使用方法から逸脱しているが、粘着力の無いフィルムにシールを貼って密封するよりも、シール同士で密封した方がはがれにくくなるという算段らしい。
フィルムとはおさらばし、剥離紙つきシールを真っ二つにする。このやり方だと本来の二分の一の大きさのものまでしか加工できないが、今回はギリギリセーフ。
お気に入りのしおり(画像左)のサイズに合わせて、台紙(画像右)を拵えた。
台紙に収まるようにタンポポを配置。
まずは台紙をシールに貼り付ける。
後は、もう半分のシールを上から一気に押し付けるのみ。
はい、失敗した。空気入りまくりの、シワできまくり。タンポポの頭、意外と分厚い。
左下の角はシールがずれてラミネート加工できなかった。しかし、セロハンテープでなんとかリカバー。
悪あがき程度に空気を抜けば完成。失敗はしたが、しおりとして使うには申し分のない出来栄え。
サイズもちょうど良い。
ラミネートシートが余ったので、ついでに「あの頃の自分しおり」も作った。
自分の分身だからか手によく馴染む。最低限残した、ふちの部分も「念」みたいで良い。
こちらもグッドサイズ、グッドデザイン。
ポケットとの相性も抜群。
最高。
テキトーに作ったので40分程度で二つもできた。
しおりを変えて、気分を変えてみるのも良いだろう。
おまけ
<了>