刑事マガジンを、読む。プレファイナル

『相棒 season23』第3話「楽園」、面白かった。

「招かれざる客」「待ちぼうけ」「女神」などを彷彿とさせる作品だったが、情報量の多さ、事件の複雑さでは図抜けていた。かといって、いたずらにわかりにくくした話ではなかった。SNSの右京さん動画に驚き、右京さんの推理をトレースし、「親子そろって、どうかしてるよ」と客観的に突っ込みを入れる。今回は亀山君がいつもより視聴者に近い立場だったため、複雑な事件でも置いていかれることがなかった。「待ちぼうけ」や「女神」における捜査一課の立場にありながら、「そろそろ着くころだろうと思っていました」と右京さんに言わしめるまでの活躍を見せた亀山君。「ついてない女」あたりと比較してみるのも面白いかもしれない。

 

上記の構図を成立させるための工夫も理に適っていた。右京さんが単独で捜査し、その情報を亀山君に共有しなかったことには「休暇を取っているから」という極めてホワイトな理由が用意されており、デジタルデトックス向けのペンションを右京さんサイドの舞台にすることで、連絡が取れない状況が合理的に作り上げられていた。シーズン21「再会」でも扱われた「デジタルデトックス」という要素が、『相棒』に新たなクローズド・サークルのカタチをもたらした。

 

そんな現代的なクローズド・サークルが舞台に選ばれたことにも、特命係を別々に動かすため以外に「ハッキングから仮想通貨を守るため」という、ストーリーに絡めた理由が用意されており、理に適っていた。宿泊客の集合にも「招かれざる客」とはまた異なる偶然の排除があり、納得感があった。

 

手袋で足がつく皮肉などアイデアが盛り込まれていたが、今回のミソは、バジリスクも鮫島も顔がバレていないことだろう。得体の知れない犯罪者同士の争いはシーズン19「欺し合い」でも描かれたが、今回は、対決が大オチではなくメインだったため、動機や目的まで深く描かれていた。鮫島に成り代わるためのパスワードについての言及、フォローまでなされていた。

 

コンフィマートや特命係を排除するポーズ、ダークウェブなど、今シーズンの初回前後編や過去回とリンクする要素・小ネタもあり、事件以外も面白かった。劇場版シリーズのBGMが多用されていたのも印象的だった。

 

今回の脚本は光益義幸さん。予想が外れたのでまさしく予想外。

これまでになく複雑な話だったので正直意外だったが、観返すと「パソコンの持ち主がバジリスクとは限らない」というトリックは、光益さんの『相棒』デビュー作(地上波ドラマのデビュー作でもある)の「最後の晩餐」における「中身だけ本物の手紙」のトリックに通じるものだし、変装してターゲットの会社に潜入すること、バジリスクの友情といった要素は第2作「悪役」を彷彿とさせるものだった。

 

「離れてみるとありがたみがわかるもの」として、相棒とスマホを絡めたオチも綺麗だった。あいぼーとあいふぉん、ダジャレ?

ともかくも、繰り返し観たくなる作品だった。

 

来週は予告からインパクト大。脚本は森下直さんだと予想。

 

 

さて、最近入手した『刑事マガジン』の話をしよう。

 

まずはこちら、『刑事マガジン vol.2』(2004年、辰巳出版)-シーズン2特集。

ブックオフオンラインで購入。220円。

水谷豊×寺脇康文 P4~7

鈴木砂羽 P8

高樹沙耶 P9

取材時期は2003年の11月。シーズン2の折り返し地点ということで、前半の振り返りと後半の展望、浅倉の生死についての話など。まだ2シーズン目ということで、キャスト、キャラクター同士の関係性についての話も多く、何シーズンも続いていることを知っている状態で読むと、なんだか面白い。

 

相棒〈特命係〉訪問 撮影現場リポート P10

特命係の旧セット(「旧」がありすぎてわかりにくいが、シーズン1・2のもの)の裏側が見られるのはレアかも?撮影中のエピソードが何かは明かされていないが、様子からして第14話「氷女」と思われる。

室内装飾に「百人町改造銃密売事件」の表彰状があり、「日付は平成12年6月3日。ファンの方なら、わかる⁉」と解説されている。日付はプレシーズン第1話の放送日だけど、改造銃なんて出てきたっけ。

 

和泉聖治 監督 P11

「ロンドンにいるはずの右京さんが、なぜか日本で事件の関係者に接触している。そこで視聴者も亀山と同じ視点で、同じように驚いてもらいたい。実にさりげなくスッと登場して、一瞬、目を疑ってしまうような。やっぱり亀山のキャラクターを使うのが一番わかりやすくて、素直に驚けるかなと思ってね」

 

輿水泰弘 脚本家 P12

・「それで時代性が入ってたほうがいいってことで思いついたのが、警視庁の中で窓際に行かされてる刑事という設定。リストラばやりの頃だったので「特命係」っていうのは気に入ってもらえたみたいです」

・「そんなにロジカルな謎解きはしてないんですよね、実は。レトリックなんですよ。自分も本格ミステリーを書ける頭じゃないから、凄い推理をしてるみたいに見せかける(笑)」

 

松本基弘 プロデューサー × 須藤泰司 プロデューサー P13

・「2クールだと、もちろんベストは尽くすんですけど、実際全部を傑作になんかできないんですよ。ある水準は保っていって、何本かに1本はパシッと面白いのができる、そう考えていかないと2クールはもたない」

・「殺人晩餐会」の凶器について。「会社宛てのご意見のメールで「視聴者をバカにするな!」っていうのがドサッとある一方で、「いやー、最高でした」っていうのもあって。それぐらい極端な反応のほうが、番組としては活きている」

 

P11~13にはシーズン2第1話から第10話までのストーリーガイドも載っている。

 

六角精児 P14

「米沢は、鑑識の人間ですから外にも出るんですが、室内で警察の屋台骨を支えていることに喜びを感じている人間なんだなと思います。(中略)少々オタク的な感じがあるんではないかと思います」

 

山西惇 P15

・「消える銃弾」について。「ラストで、コンタクトが右京さんの紅茶カップの中に入っているというのは、水谷さんのアイデアです。で、その後の展開を寺脇さんや監督を含めて決めました」

・「蜘蛛女の恋」について。「寝っぱなしの僕の起こし方を寺脇さんが台本にないやり方をいろいろ探っていて。最終的に寺脇さんが重たい箱を僕のお腹の上に載せるというのを思いつかれて (中略)どう反応するかというところまでは打ち合わせせずに、テストをやって、そのときに目が覚めないほうが面白いなということで(笑)」



続いて、『まだまだ刑事マガジン』(2005年、辰巳出版)-シーズン4特集。

アマゾンで購入。472円。

『あぶない刑事』復活に伴い、『刑事マガジン』も復活とのこと。タイトルに「まだまだ」と付いているが番外編ではなく、vol.3としてカウントされている。巻末にはカラー7ページにわたって柳沢慎吾さんの「スペシャルインタビュー&デカネタ誌上ライブ」が載っている。もはやなんでもアリだ。でも、そこが良い。

 

水谷豊 P44・45

・「殺しのピアノ」について。「これに関しては、右京がピアノに触るエピソードをどこかで作ろうという話が、あらかじめ出ていたんです。でも、僕が昔『赤い激流』でもやった「英雄ポロネーズ」をやるかどうかというのは、決まっていなかった。ホンができた段階でも、どの曲でやるかはまだわからなかったんじゃないかな」

・「第1話では今までにないぐらい、高い位置から紅茶をカップに入れました。そこも見どころかな(笑)」

 

寺脇康文 P46・47

「右京さんと薫については、セリフ回しや細かい「てにをは」まで、演出側から任せていだだいているんです。相談する場合もありますけど、とりあえず監督に見せて「これでどうですか?」と。もちろん、豊さんとは先に話していますけど、あまり大きな変更じゃないときは、現場で言ってみたりしますね」

 

『相棒 SEASONⅣ』ストーリーガイド P48・49

シーズン4第1話から第3話までのあらすじ紹介。1話あたりの場面写真が多くて嬉しい。

 

片桐竜次 P50

「内村刑事部長は、見ての通りの人。家族がどうとか、そういう背景はいらない役。制服を着たらこういう人間だ、というだけで、生活感はいらないんじゃないかと思いますね」

 

川原和久 P51

「今回の第4シーズン、芹沢が活躍する話があるんです。伊丹としては、それもたまにはいいんじゃないかと思いつつも、「今や時代は芹沢さんですか」という悪意あるセリフ(笑)があるんですが、ビックリしました。「これ、この間、俺たちが楽屋で喋っていた話じゃん」(笑)と。「今や時代は山中さんですか」とかふざけて言っていたのが、台本に取り入れられていたんです」

 

撮影現場リポート P52

「密やかな連続殺人」前後編の撮影現場リポート。東映東京撮影所での撮影と川崎ロケ。助監督もスーツを着て刑事に扮しているとのこと。ゲストがいるシーンではないが、撮影の裏側を収めた写真は、やはり嬉しい。

 

ポスター&ノベルティー ギャラリー P53

シーズン1から4までのポスターと、シーズン2・4のノベルティーが紹介されている。

社会科の資料集にありそうな質の写真になってしまった。

こんなお茶セットがあったなんて知らなかった。シーズン4のノベルティーはクリアファイルで、「警視総監賞」(読者プレゼント)の対象にもなっていた。

ぐるぐる警視総監賞。

 

シリーズ全話ガイド P54~63

『土曜ワイド劇場』時代(プレシーズン)からシーズン3までの全話のストーリーガイド。

驚くべきことに、欠番作品「夢を喰う女」も紹介されていた。オフィシャルガイドにも載っていないので、これは貴重だ。

 

 

今回はここまで。

刑事ドラマファンの強い味方、『刑事マガジン』のコンプリートまで、あと1冊。

 

 

<了>