いらだちの日

嬉しい事とイヤな事とがぶつかって、ゼロになった。

 

低気圧で頭が痛い。

エクセルでエラーが出まくった。

抜き打ちの出席登録に間に合わなかった。

 

サボってた訳じゃないけど、結果は同じ。

小さな判断ミスが重なって、取り返しのつかないやらかしを招く。

 

悔しい。

なまじこちらに非があるぶん、悔しさは増す。

100%向こうの非だったら、むしろ堂々とできるもんだ。

 

自分が悔しい。

脳みそが沸騰してルーティンすらままならない。

今にも零れ落ちそうなこの悔し涙を怒りの証拠として提出してやりたいくらいだ。

 

でも結局、おんなじ日の繰り返し。

雑踏を上手く通り抜けられた日は良い日で、人とぶつかった日は悪い日だ。

 

それでも良いと今は思える。

 

 

 

今週の読了本

結城充考さんによる「イルマシリーズ」第三弾。

『捜査一課殺人班イルマ エクスプロード』(2019年、祥伝社文庫)

 

あらすじ

大学の研究室で教授一名が死亡する爆破事件が発生した直後、同じ管内にある超高層ビルで人質を取った立て籠もりが発生。警視庁捜査一課の入間祐希は激しい攻防の末、犯人を確保するが、四名が惨殺されていた。その後、科学系出版社で第二の爆発が。爆発物には《ex》と書き残されていた。イルマは《ex》の猛追を開始するが・・・・・・。それは壮絶な復讐戦の幕開けだった。

-裏表紙より

 

前作『ファイアスターター』から二か月後の物語。爆発事件ということで前作に登場した爆弾魔《ボマー》と爆発物対策係の土師(ハジ)が再登場する。イルマと土師のスリリングなやり取りが今作でも堪能できる。

土師の他にも、上昇志向の強い捜査一課刑事・見上(ミカミ)や潔癖なキャリア・伊野上(イノウエ)など、一物抱える人物たちが登場する。彼らとイルマとの不穏な雰囲気は「クロハシリーズ」を彷彿とさせる。

イルマと宇野(ウノ)の関係も相変わらず面白い。年も階級も下の宇野はイルマの部下で、暴走しがちな彼女の良き相棒(ストッパー)でもある。宇野は第一作『狼のようなイルマ』で大怪我を負ったイルマについて「一生面倒をみる覚悟は、あります」と言ったり、かと思えば突然他人行儀になったりと、(無自覚に?)思わせぶりな言動をとっている。そんな彼の言動に心をざわつかせたり、淡い期待を抱いたりするイルマの様子が微笑ましく、緊迫の物語に緩和をもたらしている。

 

 

勢いをそのままに第四弾も読破。現時点での最新作。

『捜査一課殺人班イルマ オーバードライヴ』(2019年、祥伝社文庫)

あらすじ

片目にナイフを突き立てられた元都議会議員の毒殺死体が発見された。臨場した捜査一課殺人班・入間祐希は毒物専門の殺し屋・蜘蛛が拘置所を脱走していたことを知る。過去の因縁から執拗にイルマを追う蜘蛛は、彼女の自室に侵入、二十四時間後に死に至るという毒物を打ち込む。指示に従わなければ一人の少年が死ぬという。少年の命を守るため、イルマの孤独な闘いが始まった。

-裏表紙より

 

第一作でイルマを翻弄した毒殺師・蜘蛛が再び毒牙を剥く。イルマの数少ない理解者であるベテラン鑑識官・渕(フチ)の進言によってイルマには警護がつくことに。イルマの失脚を狙う捜査一課の曽我管理官は、その材料集めのために暴力団対策係の小路(ショウジ)を出世を条件に警護員として差し向ける。

小路をそっちのけで元都議会議員の毒殺事件を捜査するイルマだったが、蜘蛛によって遅効性の毒物を打ち込まれてしまう。少年の命を人質にとった蜘蛛は、イルマに「本物の悪意というものを見せてやる」と言う。

蜘蛛の指示で行動するイルマは男性の死体を発見し、一連の事件が蜘蛛による「舞台」作りだと確信する。当該事件の重要参考人となってしまったイルマは警視庁の追跡を振り切り、少年の命を救うことができるのか。緊迫の二十四時間。

 

前作『エクスプロード』で発生した拘置所での脱走事件が今作に繋がる。野心家の刑事・見上も再登場し、曽我管理官の手先としてイルマを追う。

イルマと小路の初体面となった冒頭の闇カジノ摘発は、トリックが興味深く、短編としても楽しめる。公私ともに熱意を失っていた小路の心境の変化は、間違いなく今作の見どころのひとつだ。

イルマと宇野の関係も熱い。蜘蛛によって自由な行動を封じられたイルマは「信頼できる人間」としてただ一人、宇野にだけは事情を打ち明ける。イルマに協力しつつ蜘蛛の行方を追う宇野だが、警視庁内部からの圧力がかかる。

 

究極の選択を迫られる宇野とイルマにどのような結末が待ち受けているのか、刮目せよ。

 

今回も楽しい読書体験だった。

 

 

氷川きよし

 

 

<了>