健康診断を受けるために、二か月ぶりに大学に行った。
私が通うキャンパスは最寄り駅から遠い。
生憎の雨の中、小便を我慢しながら早歩きで坂を登る。トイレトイレ。
駅でトイレに行っておけばよかった。
早歩きのおかげで予定よりも十五分も前に着いてしまった。トイレトイレ。
受付に係の人がいて、尿検査のキットを渡された。今日中らしい。すっかり忘れていた。
駅でトイレに行っておかなくて良かった。
馴染みのトイレで採尿。欠尿軍団を追い越して、先頭集団に入るのだ。
トイレの出入り口でMr.タンポポと遭遇した。
彼と会うのも二か月ぶりだ。
積もる話に花を咲かせたいところだが、生憎ここはお花を摘む場所だ。
温い小便を片手に談笑する訳にもいかないので、「髪、切った?」などと適当な挨拶をして彼と別れた。
私はタモリではないが、「髪、切った?」と聞くことが多い。
久々に会う友人には、「髪、切った?」、「眼鏡、変えた?」、「靴、新しいヤツ?」などと聞いてしまうのだ。
私なりの会話を広げるテクニックだ。いつの間にか身についていた。
この間は数年ぶりに会った友人との話題に困り、気付いたら相手の肌ツヤを褒めていた。
相手の変化に気付けるのは良いことだが、久しぶりに会う人間の肌ツヤをいきなり褒めるのは間違っていたかもしれない。
身長、体重、視力を測った後、内科検診へ。
問診票に印刷にされたQRコードが何度やっても読み込まない。
「○○○○-○○○○(学籍番号)は存在しません」なんてメッセージまで出やがる。
いつの間に除籍されたのか。
十数回目にしてようやく読み込んだ。良かった。
動揺してしまったが、心音に異常はなかったようだ。良かった。
レントゲンも終えて健診は終了。帰路に就く。
交通費を節約するために最寄駅からさらに一駅歩く。
行きと帰りで300円ぐらいの節約になる。
しかし、最寄り駅と目的の駅の間に難所がある。
ブックオフだ。
せっかく300円を節約したのに、ここで所持金を減らす訳にはいかない。
スルーしよう。
そう思っていたのに、ちょうど店の前で靴紐がほどけてしまった。
雨が降っているので、軒先に避難して紐を結ぶ。
しかし、軒先まで入ったのに店に入らないのは失礼じゃなかろうか。
よし、見るだけ見よう。二か月ぶりだし。
顔なじみの店員さん。やあ、久しぶり!髪、切った?
お決まりのルートで店内をパトロール。
ヤバい、どうしよう。
作家買いをしている作家の未入手の新書と単行本がそれぞれ100円、200円で売られている。
オンラインの価格より安い。買うべきか。
いや待て、この出版社なら文庫化もするだろう。今日はやめよう。
でも、安い。新書と単行本ならこれ以上の値下げは期待できない。買うべきか。
あー、300円が。消費税を考えたらマイナスだ。うーん。
よし、やめよう。
この店なら店舗受け取りの時にクーポンが貰えるから、そしたら買おう。
顔なじみの店員さん。じゃっ!また来るよ。
ふー、危なかった。よく耐えた、俺。
その後、乗り換え駅の近くにある別のブックオフで私は1000円の買い物をした。
しばらく歩くか。
今週の読了本
YouTuber・鈴木けんぞうさんの初エッセイ『できるだけがんばります』。
学生時代からゲーム実況者となった現在までのあれこれがありのままに綴られたエッセイ集。
高校時代に突如おススメに浮上してきたこの動画を観て、私は彼にハマった。
そして、私には人生二度目のポケモンブームが巻き起こった。
しかし、正直この本を買うかは迷っていた。
そんな時、Twitter上に序章が公開されたことを知った。
僕のエッセイ本の試し読みページをツイッターで公開することになりました。
— 鈴木けんぞう (@tanakabarakouki) 2023年2月19日
こんなのが8万字続きます。
試し読んで、気に入っていただければ買って読んでください。
気に入っていただけなかった場合は、ちょっと高い鍋敷きだと思って買ってください。https://t.co/YkBA8fPHxK pic.twitter.com/01kwRFV7m5
面白い。よし、買おう。
そして、買った。そして、読んだ。
らしさ全開でどれも面白かったが、個人的には「体罰選手権」と「鈴木ボリビア旅行記」が好きだ。
人生年表や一問一答が収録されたカラーページも素晴らしい。
所有ソフト総計508本、プレイ時間総計15,650時間は凄すぎる。
同じエピソードでも、音声で聞くのと文字で読むのとではやはり異なる。
楽しい一冊だった。
第二弾希望。
<了>